鍼灸マッサージの参考知識


● 鍼灸治療の現状は?

 WHO(世界保健機関)は、1981年、東洋の伝統医学である「経絡・経穴の国際統一についての会議」を持ち、ツボと呼ばれる経穴の位置や名称を国際統一する作業を始めました。そうした中で、現代の西洋医学でも、あまり効果の期待できない慢性的な痛みや痺れに対して、特に鍼灸療法は効果的であり、その良さが見直され、現代医学と併用して、鍼灸療法を扱う病院も増えてきています。




● なぜ鍼灸療法が効くのか?

 鍼治療の僅かな刺激に、どうした効果があるのかは、明治末期より、様々な研究が続けられてきました。
 そうした研究結果を簡単にまとめてみると、消化器・呼吸器・泌尿器系の器官に影響を及ぼし、また、胃や小腸などの消化器の運動。排気量や利尿・排尿機能の調節。
 或は、分泌機能が低下しているものに対しては、これらの機能を亢進させ。逆に、亢進しているものに対しては抑制(押さえる)する働きが作用します。つまり正常な状態に戻すように働きます。
 同時に、血液循環を促進します。このように、広範囲にわたって体に様々な影響を与えます。




● どのような病気(症状)に効果があるのか?

 WHO(世界保健機関)が認める鍼灸療法の適応領域

  1. 神経系、及び、筋肉・骨格系の病気 頭痛、片頭痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺、難聴(突発性難聴)、打撲による麻痺、末梢神経疾患、多発性筋炎の続発症、メニエール病、神経性膀胱障害、夜尿症、肋間神経痛、頚肩腕症候群、五十肩、テニス肘、坐骨神経痛、腰痛、膝関節痛
  2. 胃腸の病気 胃下垂、胃炎、胃酸過多症、十二指腸潰瘍、腸炎、便秘、下痢、しゃっくり
  3. 口の病気 歯痛、抜歯後の痛み、歯肉炎、咽頭炎
  4. 鼻・のどの病気 風邪、気管支炎、気管支喘息、鼻炎、扁桃炎
  5. 目の病気 結膜炎、中心性網膜炎、仮性近視、白内障
 以上のように、西洋医学の分類上では、かなり広範囲に及びます。しかし実際に鍼灸治療で最も良く行われる治療は、肩凝り、腰痛、坐骨神経痛、膝関節痛、頚肩腕症候と言われる、首・肩・腕にかけての痛みや痺れなどです。これらに対して成果を上げています。




● 鍼灸療法で効果を望めない病気は?

 癌や細菌感染による病気や外科的な手術を要する病気。その病態も、かなり進行したものは鍼灸療法では効果は期待できません。
 効果が期待できるものもあることはあるでしょうが、当然ながら適応範囲の限度と言うものがあります。
 また鍼灸の適応である「腰痛」についても、原因となるものが、癌や内臓疾患、或は、骨に異状がある場合などは鍼灸療法の適応外で、西洋医学との併用を必要とします。
 従って西洋医学の各種検査によって、病気が認められないにもかかわらず、辛い症状があると言った場合に、鍼灸治療の効果が発揮されるものです。




● 鍼はどんな鍼(針)? 痛くないか? 灸は熱くないか?

 鍼(針)と言うと、たいていの人は、注射を想像・連想し、「痛い」のでは?と心配されます。鍼の種類も多様ですが、一般的には柄のついた長さ約3cmほどの鍼です。注射針はもとより、縫針よりも更に細く、髪の毛よりも少し太いくらいの0.2mm程度のものです。しかも、鍼の先端は更に細く、刺入時の痛みを無くす工夫がされています。痛い治療ならば、誰も好んで鍼治療は受けないでしょう。ご安心下さい。
 針の材質は、以前は金や銀が使用されていましたが、現在ではステンレス針が大多数を占めています。その理由は、切れ味が良く、刺入時にも痛みを感じにくく、折れないという理由があげられます。
 灸治療は、皮膚上にもぐさを置き、これを燃焼させて皮膚への熱刺激を与える療法ですから、鍼のように痛くないと言い切れません。当然、熱いです。しかし、もぐさは蓬の葉を精製して作られますが、十分に精製された上質の物は、おだやかな熱刺激が皮下に浸透します。一般的な灸は「糸状灸」といい、米粒の半分以下。糸の様なもぐさですから、熱いと言っても一時的にチクッと感じる程度のものです。




● 鍼はどのくらい刺すの? どんな治療種類があるの?

 症状や部位によって違いがありますが、普通は3mm〜2cm程度刺し入れして治療を行います。まず、鍼よりも2〜3mm短い筒(鍼管)に、柄の付いた鍼を入れて、鍼管より2〜3mm出た鍼の頭をトントンと指先で叩いてから、鍼管を抜取ります。この状態で既に鍼は皮膚に2〜3mm入っていることになります。後は、症状、部位によって深さ、刺激量など治療状況に応じて行われます。これが基本的な鍼治療です。
 これとは別に、一度だけ柄の付いた鍼を刺入し、その鍼の柄の部分に低周波治療機器の電極をクリップで接続固定し、低周波を通電する「低周波置鍼療法」。
 或は一度刺入した鍼の柄部分に灸を載せて、温熱効果を加える「灸頭鍼」。
 乳児・幼児、或は、お年寄りのために、皮膚に刺入せず、皮膚表面で弱い刺激を与える「小児鍼」。
 皮膚内に2〜5mm程度の小さな鍼を斜めに入れて絆創膏で固定し、数日間、連続した鍼治療効果を得るための「皮内鍼」。
 これと同様の効果をえるもので、2〜3mm程度の画鋲の様な形をした鍼を皮膚に対して垂直に入れて絆創膏で固定する「円皮鍼」。
 これらは日常生活で何の支障も、痛みもなく上から揉んでも痛みは感じません。
 最後に「中国鍼」これは、普通の鍼よりは少し太めの鍼ですが、熟練者であれば痛みは感じません。以上の様な種類がありますが症状に応じて施術方法も異なります。




● 灸治療には、どの様な種類があるのか?

 背中などに大きなケロイド上の灸の跡が残っているお年寄りをよくみかけます。これは「打膿灸」という独特な灸療法で梅干し大のもぐさを皮膚上に置き、燃焼させ、その後に相撲膏という膏薬を貼り、わざと化膿させたため跡が大きく残ってしまったものです。
 灸は、もぐさが大きければ効果があると言うものではありません。症状に応じた有効なツボに、有効な適量の熱刺激を加えることが、効果的な灸法です。
 ですから一般的には、先に説明した糸状灸が施され、熟練者が行えば跡を残すことはありません。小さな水泡ができたとしても、やがて自然に消えてしまいます。
 この他に直接、皮膚に灸を置かない「温灸」や「隔物灸」、先に解説した鍼の柄に灸を置いて、熱刺激を間接的に伝える「灸頭鍼」などは、熱いと言うよりは、温かく心地よい熱刺激で、跡も残すこともありません。




● どこで鍼灸マッサージ治療を受ければよいのか?

 最近では病院でも鍼灸治療を受けられるところもあるようですが、専門の鍼灸マッサージ治療院をお勧めします。専門の治療院の場合、次の点に注意して選ぶとよいでしょう。

  1. 治療院が清潔に維持管理され、治療器具・機器の消毒等がしっかり行われている。
  2. 治療器具、医療機器の設備が完備され、症状に応じて対応できる。
  3. 治療前に症状・経過等を詳しく聞き(問診)、また、治療内容・治療経過をカルテに記載している。
  4. 患者の質問に対して、的確にわかりやすく解答・解説できる。またそれらの知識を有している。
  5. 当然の事ですが、鍼師、灸師、あん摩マッサージ師、指圧師の国家試験合格者で、公的免許を所有している。
  6. その他、専門知識は元より一般医療知識にも詳しく、治療経験も豊かな治療者(施術者)であれば、尚更、結構なことです。
【ご注意】  ご存知ですか?

 整体やカイロプラクティックの施術所は、医療機関ではありません。その殆どが、医療とは関係のない、素人(無免許・無資格者)が行う素人施術です。
 国や県が認めた、これらの学校や養成機関はありません。したがって、これらの国家試験、国家資格(免許)なども、実際には存在しません。
 上記の様に、あん摩・マッサージ・指圧師免許、鍼師・灸師免許、柔道整復師免許、などを有する者以外が、医業類似行為を行っている場合、無資格・無免許の施術者となります。
 見よう見真似で覚えた素人まがいの危険なものもあり、無責任な誇大広告に気をつけて、正しい治療を受けましょう。
 整体や、カイロプラクティックの宣伝文句は、肩こり、腰痛、頚腕痛をはじめ、総べての病気は、頚椎や脊柱、あるいは骨盤のズレやヒズミが原因。といっています。
 しかし、整体や、カイロにより骨折や脱臼、神経麻痺やしびれ、歩行不能になった人、寝たきり状態の人、あるいは腰痛だと思っていたら、思わぬ内科的病気があって、手遅れになってしまった。などの実例報告もされています。
 既に厚生省も、整体やカイロなどの危険性について、各都道府県に次の点を通達しています。

  1. カイロや整体で「ボキボキ」させるような行為の禁止
  2. 骨粗鬆症やリウマチ、ヘルニアなどの病人への施術の禁止
  3. みんなを惑わす誇大広告の取締りの強化。など
 無免許・無資格の整体やカイロによる被害者救済、不正施術の摘発を目的に、「カイロ・整体等実害110番」を下記の協会では開設しています。お気軽にご相談・ご報告下さい。

社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会   TEL:03−3359−6049
社団法人 三重県鍼灸マッサージ師会   TEL:059−226−3221

鍼灸マッサージ師 と 整体・カイロ業者 との違い
内 容鍼灸マッサージ師整体 ・ カイロ
国家試験受験制度合格者のみ免許取得受験資格が無い
免許(国家資格)厚生労働大臣が認可政府の認可は無い
免許取得までの期間養成施設において最低3〜6年間2日〜3ヶ月の民間受講
法律規制・制裁関係医事法規に従い開業規制が何も無い
事業所名称関係厚生労働省が認める名称どんな名称でもよい
治療院開業保険所の検査合格で可能自由にできる
治療施術内容各種全身治療が可能脊椎矯正法のみできる
広告宣伝内容法規に従い制限・規制されるどんな広告でも制限無し
衛生管理義務・検査滅菌消毒設備・間取り等の検査がある何も無い
健康保険治療医師の同意書があれば可能できない

当院院長の国家資格免許(本物)を掲示致します
あんま・マッサージ・指圧師 免許証 免許証画像
はり師 免許証免許証画像
きゅう師 免許証免許証画像




● 治療を受ける時は、どんな事に注意をすればよいか?

 熱がある時や体がひどく衰弱している時は避けた方がよいでしょう。
 また、治療の直後の入浴や飲食も、なるべく控えてもらった方がよいでしょう。特に、はじめて治療を受けた人は、治療後に体が重く感じたり、熱っぽく感じたりすることも、まれにありますが、翌日にはそうした症状も消え、体も楽になります。
 治療に慣れれば二度目以降は、こうした症状はあらわれません。ご安心下さい。按摩、指圧、マッサージなどを受ける場合は、体をしめつけるガードルやコルセットなどは身に着けないようにし、心身共にリラックスした状態で、治療を受けるよう心掛けましょう。
 また、按摩・指圧・マッサージ、それぞれ刺激が強ければ(強い手技を受ければ)効果的である。と言うようなことはありません。むしろ、あまり強い手技療法は、かえって筋肉に疲労を与え、悪い結果を招くことになります。むやみに強い按摩やマッサージには注意が必要です。また、症状(病状)によっても、行って良い場合と、悪い場合もありますから、治療者に相談の上、施術を受けて下さい。




● 治療には、どのくらい通えばよいのでしょうか?

 筋収縮性の頭痛などは、一回の治療ですっかり痛みがひいてしまう場合もあります。また一定の期間、治療を続ける必要のある場合もあります。
 病気の種類や症状によって、治療日数はかなり違ってきますが、急性の症状は比較的早く治り、慢性的な病気(症状)ほど長くかかるのが一般的です。
 最初は一日置きに2〜3回ほど通院し、症状が軽くなれば、週に一回、或は、状態が良ければ月に一回は、定期的に健康維持のために治療を受けておくことなども良いことでしょう。




● ツボ、経絡は、どこにあり、どんな役目をしているのか?

 鍼灸治療をする部位(治療点)は、ツボ(経穴)と呼ばれる場所です。
 日本で定められた経穴の数は、全部で361あります。これが無秩序に存在するのではなく、一定のラインにしたがって並んでいます。
 この経穴の位置を結んだラインを「経絡」といい、代表的に14経絡ありますが、それぞれの臓腑に対応して、六臓六腑(五蔵六腑に心包の臓を含める)をめぐり、各臓腑の調整を行う経絡が12経絡。経絡の名前は、肺の臓をめぐる経絡には肺経、大腸の腑をめぐる経絡には大腸経と言うように、めぐる臓腑の名前がついています。
 そして、これらの経絡は、関連する臓腑にエネルギーを与えています。
 残る2つの経絡には、顔、胸、腹の真ん中を通る「任脈」と、背中の真ん中から頭を通る督脈があります。この二つの経絡は、12経を流れるエネルギーの過不足を調整する重要な役目を果たしています。




● ツボ(経穴・経絡)を治療すると、なぜ病気が治るのか?

 体が健康で、健全であるという時は、気血のエネルギーが、まんべんなく全身にとどこおり、円滑にめぐっています。それが、ある場所で流れが滞ったり、停止したりすると苦痛がでてくるのです。
 例えば、胃のもたれがおこってきたとしましょう。これは胃をめぐる胃経という経絡のエネルギー循環が悪くなった証拠と考えられることになります。 それらを治療者は判断し、適切な場所への鍼灸治療を行い、エネルギーの流れを取り戻すことで、症状を緩和し、弱った機能を回復させるのです。要するに、ツボ(経穴)は、病気が表れる場所であり、体が症状を訴えている場所でもあります。同時に、それは有効な治療ポイントにもなると言うわけです。




● 按摩、指圧、マッサージは、それぞれどう違うのですか?

 痛みを訴える時。例えば、腹痛になった時、誰に教わることも無く、自然に手はお腹の辺りを押さえています。これこそ「手当て」という立派な医療行為で、手を使った手技療法の基本というべき方法です。
 こうした手技療法は、長い歴史の中で次第に体系づけられ、按摩、指圧、マッサージなどは、手技療法の代表的なものです。
 「手で体の状態を診ながら、悪い部分を発見して治療する。」という点では、按摩・指圧・マッサージは同じですが、按摩は中国で、マッサージはヨーロッパで、指圧は日本で、それぞれ生まれ発達してきた手技療法です。
 基本的に按摩や指圧は、衣服の上から行うのに対して、マッサージは直接皮膚に対して治療を施すのが原則です。
 また、按摩や指圧は、体の中心から末端に向い遠心性の刺激を与えるのに対し、マッサージでは体の末端から中心に向って求心性の刺激を加えるのが原則です。
 こうした手技療法の刺激の方法を大別すると、「さする」「もむ」「こねる」「たたく」「ふるわす」「押す」の六つです。この中で、指圧は「押す」、按摩は「揉む」、マッサージは「さする」が基本的刺激方法です。




● 手技療法の刺激には、どのような効果があるのですか?

  1. 筋肉の緊張をほぐす。  体の各部の筋肉は、緊張と弛緩を繰り返し、骨や内臓などの器官を支えたり、動かしたりしていますが、緊張して硬くなると、思うように体も動かなくなってしまいます。更に、筋肉が緊張している状態では、筋肉中に老廃物が蓄積され、これが、だるさや痛みをおこす引き金になります。手技療法ではこうした筋肉の緊張をほぐし、体の変調を調整し、骨格を矯正します。
  2. 血液、リンパ液の循環を活発にする。  筋肉をはじめ、皮下の組織や血液・リンパ液などの体液の流れを良好にし、体の隅々まで栄養物を循環させます。痛みやだるさの原因になっている老廃物も、取り除かれ、細胞が活性化され、細胞本来の働きができるようになるのです。
  3. 神経や内分泌の働きを良くする。  神経が高ぶっている時(興奮状態の時)は、機能を鎮静(抑制作用)させ、神経の働きが低下している時は、逆に高めるように(興奮性作用に)働きます。
  4. 内臓の働きを調節する。  刺激した特定の部分だけでなく、反射的に他の臓器(内臓)にも刺激を与え、機能が正常に動くように調整します。
  5. 体調を整える。  体は、常にベストの状態を保とうとする、恒常性保持機能を持っています。手技療法によって与えた刺激は、こうした恒常性保持機能を高め、全身の調子を良好にするように働きます。