● 胸部外傷・損傷(Chest Injury)

【原因】

 打撲や擦過傷(すり傷)などの軽いものから、肺や心臓を傷つけ、致命傷となるほど重いものまであります。
 刃物や銃弾などによるもので、体の表面に傷口のある場合(開放性外傷、鋭的外傷)と、交通事故や高い所からの転落などによるもので、皮膚に傷口が無く、広い範囲を打ったり、圧迫されたりする場合(非開放性外傷、鈍的外傷)があります。
 傷口の無いケガの場合、骨折があったり、肺や心臓に損傷があっても外見ではわからないため、診断が遅れて危険な状態になることもあるので注意が必要です。

【症状/治療】

 胸部の打撲

 打った部分を冷して様子を見ますが、肋骨骨折や肺や心臓の損傷を伴うことがあるので、外科で受診します。

 血気胸

 胸部の強い打撲ではその約30%に、刃物などによる胸部の刺し傷ではその殆どに、血胸、気胸、二つを合併した血気胸がおこります。
 血液や空気によって肺は圧迫されてしぼむので、胸痛、呼吸困難になります。
 緊急性気胸がおこると更に危険で、息を吸うたびに胸腔内に空気がどんどん溜り、心臓や肺を圧迫してチアノーゼを起こします。そして高度の呼吸困難となり、血圧が下がってショック症状となります。
 この様な状態になったら、直ちに胸腔内の空気や血液を抜き、肺を膨らませる必要があります。時には開胸手術をして肺を縫合しなければなりません。

 フレイルチェスト

 隣り合う肋骨3本以上が、それぞれ2ヶ所以上で骨折している場合、骨折部に囲まれた胸壁は胸郭に固定されなくなるので、息を吸った時に胸がへこみ、吐いた時に膨らむという異常な状態になり、呼吸が傷害されます。 血気胸などを合併していることも多く、大変危険な状態です。人工呼吸管理が必要となります。

 心臓外傷

 刃物や銃弾などによる傷の場合、程度はいろいろですが、大量出血や心タンポナーデ(心臓とその外側の膜の間に血液が溜り、心臓がうまく機能できなくなる)などのため、放置するとショック症状をおこします。
 気管にチューブを入れたり、心嚢穿刺(心膜穿刺とも言う)を行って血液を吸引したりします。また手術により出血を止め、傷を縫合しなければなりません。その場合、大量の輸血が必要となります。
 自動車事故でハンドルに胸部を激しくぶつけるような鈍的外傷の場合、心臓破裂や挫傷などをおこします。
 緊急の開胸手術により血腫の除去、止血、破裂した傷口の縫合が行われます。

【心得】

 胸部の外傷・損傷の程度は様々ですが、重傷の場合は生命に関わり、一刻を争うことが多いので、出血の多い場合や、呼吸に少しでも異常がある場合は、大きな病院の外科や救急病院に速やかに運びましょう。


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