● 肩こりについて

 私達は、長い時間、同じ姿勢で仕事をしたり、読書をしたり、こんをつめて何かをした時など肩こりが起こります。これは首や肩の筋肉の疲労によるものですが、これ以外にも、内科的疾患のある時、精神的な疾患がある時、などにも起こります。肩こりの種類には、

1.姿勢による肩こり
2.寝違いによる肩こり
3.五十肩(肩関節周囲炎)による肩こり
4.椎間板の変性による肩こり
5.変形性頚椎症による肩こり
6.鬱病による肩こり
7.ネクタイ姿による肩こり
8.首の病気・内科的疾患による肩こり
9.その他、様々なケースがあります。

 1.姿勢による肩こり

 特別に病気がなくても、長時間、同じ姿勢や、不自由な姿勢でいたり、腕を上げた姿勢で仕事をすると、同じ場所の筋肉が疲労し、こってしまいます。

 細い首で重い頭を支え、更に重い二本の腕(体重の約8%)を、ぶら下げているのですから、じっと立っているだけでも、首や肩の筋肉には、負担を掛けている事になります。しかし、現代社会では、長い時間、下を向いたままの仕事が多くなりました。
 人間の首の後ろにある伸展をつかさどる筋肉(伸展筋=僧帽筋・頭半棘筋・頭板状筋)は、四本足の動物の様に、発達していないため、長時間の緊張を続けると、ストレスに耐えられなくなり、肩こり、腕のしびれ、痛み、頭痛と言った症状を訴えます。

 2.寝違いによる肩こり

 朝起きたら首が痛くてまわらない、起床時に首を動かしたら頚部にしびれる様な激痛が走った。という経験をした方は多いと思います。これは、睡眠中に不自然な姿勢でいたための一種の捻挫です。

 普通、寝違いは数日で治るものですが、頚椎椎間板が薄くなっていたり、椎体の角にトゲが出来た老化現象によるものや、時には、扁桃腺や中耳炎、アデノイド、蓄膿症等によって、リンパ線がはれた事が原因になっている時は、そう簡単には治りません。
 しかし、健康な状態である時、簡単に寝違いを起こすでしょうか。それは、普段からの疲労の蓄積・ストレスが引き金となって、寝違いと言う状態になったと考えられるのです。

 3.五十肩(肩関節周囲炎)による肩こり

 日常生活では、肩の周辺は大変酷使されています。骨がすり減る度合いも大きく、疲労も蓄積されやすいのです。特に年を取ると筋肉疲労で痙攣を起こし、動きにくい状態になり、又、回旋筋腱板という、肩関節を動かす腱が切れたり、石灰が溜ったり、上腕二頭筋(肘を曲げるための筋肉)が、炎症を起こしたり、関節の滑りを良くする、滑液包が炎症を起こしたりと言った事が、起こりやすくなります。

 この様な老化現象による痛みは、原因がはっきりしないのにある日突然、痛み出したと言う場合が多いのですが、これとは別に、重い物を無理に持ち上げたとか、転んで肩を打ったとかの外的要因によっても痛むことがあり、これも、五十肩になりやすい年代層に多く見られます。
 しかし、この五十肩は、根気よく治療を続ければ、必ず治ります。普通なら半年、長い人では1、2年掛かる人もありますが、肩の動きを少しずつ元に、戻す様に、肩関節の可動域を改善して行くことが必要です。痛いからと言って、安静にしていたのでは、治らない事を知って頂きたい。

 4.椎間板の変性による肩こり

 椎間板は、椎骨と椎骨をつなぐと共に、骨と骨がぶつからない様にクッションの役目をしています。しかし、年齢と共に老化し、ゼラチン状の髄核は、水分を失い、弾力性も失われ、厚みも薄くなると共に、外力を吸収して、神経や筋肉に力が加わらない様にする能力も、低下してしまいます。
 こうなると、筋肉は動きを防ごうと緊張し、長く続くと疲労してしまい、肩こりの原因となります。この様な椎間板の変化を、椎間板変性と言います。

 この様に、老化して水分を失い、すき間や裂け目が出来た繊維輪から、何かのきっかけ、例えば、上を見上げた時とか、振り返ろうと首を捻った時に、髄核が飛び出して、脊髄や神経を圧迫した状態を、頚椎の椎間板ヘルニアと言います。

 圧迫された場所や程度によって、首から後頭部の痛みやこり、肩から腕、手に掛けての痛みなどとして現れます。

 また、重症の場合には、脊髄や末梢神経の麻痺にもなります。

 治療法としては、普段から、首の筋肉を積極的に鍛える事と、正しい姿勢を身につける事が基本となります。

 5.変形性頚椎症による肩こり

 椎間板が老化することにより、椎間板は薄くなります。この変化は頚椎の中でも、最も運動の大きい第五・第六・第七頚椎に起きやすいのですが、この様な頚椎に異常な刺激が加わると、脊椎の骨も異常に硬くなったり、椎骨の先が伸びてトゲの様になった物(骨棘)が出来てきます。このトゲが神経孔(神経の出て来る孔)を狭くして、各部に向かう神経根を圧迫して、椎間板変性より、もっと強い症状が出て来る様になります。ですから、この頚椎症と椎間板変性とは、老人性の変化から来るものと言う点では、同じ様なものと考えてよいでしょう。ただ変性より頚椎症の方が、年齢的に若い人がなりやすく、治りにくくなります。

 6.鬱病による肩こり

 仮面鬱病と言う病気があります。これは、いかにも肉体的に病気がある様に見えますが、この現れた症状は仮面のもので、本当は精神的に病気があるというものです。ひどく肩がこるとか、首が痛いと訴えますが、原因がはっきりとつかめないことになります。しかしこの様な患者さんを良く見ると、仕事意欲が無い、朝起きが辛い、イライラする、全身がだるいといった精神症状が出ています。
 勿論、原因が本当に、肉体的なものから来ている場合でも、不安感が強くなることもありますから、その区別は難しいところです。

 7.首の病気・内科的疾患による肩こり

 今までお話しした以外にも、肩こりの原因は色々あります。

 例えば、頚椎カリエスや骨髄炎がある時、腫瘍ができた時なども、肩こりの症状が出ます。また、頚椎の骨折・脱臼・捻挫なども程度によって、肩こりや痛みを覚えます。その他、風邪ひき、中耳炎、肺結核、胸膜炎などがあります。
 この病気の時は、首から背中にかけて、こりと痛みを訴えます。

  1. 肩こりや痛みの原因が、自分ではっきり分からない時
  2. 安静にしていても肩こりや痛みが取れない
  3. 整形外科へ行っても原因がはっきりしない
  4. 肩のこりや痛みの起こり方が、その時によって違っていたり、痛みの持続時間が一定でない

 この様な症状の時は、内科の診断を受けてみるのも良いでしょう。

 8.その他

 色々と説明しましたが、その他としては、虫歯や歯痛などの原因。視力障害。
 コンタクトやメガネの度が合っていない人。自動車の追突事故によって起こる「むち打ち」(頚椎捻挫)の場合も、その日は何ともなくても、日を置いて、ひどい肩こりや、痛みを訴えることが多くあります。
 また、テニスや卓球など、片腕ばかりを酷使する運動や、首に負担の掛かるラクビーやボクシングなどのスポーツをした場合にも肩こりが起き、時に、突指をした事で肩こりになることもあります。

 もう一つ、大きな原因になるものに、精神的ストレスがあります。激しい精神的ストレスがあると、肩こり・腰痛は勿論のこと、内蔵まで影響を及ぼします。
 胃潰瘍の大きな原因がストレスである事は、皆さんご承知のことと思います。ですから、あなたの肩こりの原因が、はっきりしない場合、胸に手を当てて、考えてみて下さい。あなたの今の悩みは何か。嫌なことはないか。もし、思い当たる事が有れば、あなたの肩こりの原因は、ストレスなのかもしれません。




● 肩こり予防体操の指導

 一般的に肩凝りは、長時間同じ姿勢で根をつめて仕事をしたり、腕を上げた姿勢での仕事など、同じ場所の筋肉が疲労することが原因でおこります。

 細い首で重い頭を支え、更に重い二本の腕(体重の約8%)を保持しているわけですから、なにもせず立っているだけでも、首や肩の筋肉には負担が掛かることになります。首の後ろには伸展筋と言って僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋があり長時間の緊張を続けると、ストレスに耐えられなくなり、肩こり、腕のしびれ、痛み、頭痛と言った症状を訴えるようになります。

 尚、これ以外にも頚椎に原因がある場合。内科的な疾患。精神的なストレス。耳鼻咽喉科的な疾患、噛み合わせなどの歯科的な原因からも肩凝り、頭痛などがおこる場合もありますが、ここに紹介する肩凝り体操は、疲労によって硬くなった筋肉を、適度に緊張させたり、弛緩させたりすることで刺激し、血行を良くして柔軟性を取り戻し、筋肉疲労を回復さて、肩凝りや、それに伴う頭痛、五十肩(肩関節周囲炎)などを予防しようという体操です。スポーツジム的な筋力強化を目的とする強度な運動もありますが、広く一般向けと言う意味で、機具を使わず、家庭や職場のちょっとした時間に行える、基本的な体操の一部をご紹介することにします。

首・肩・背部の筋肉の基本運動

★★ 「肩凝り予防体操」 ★★

  1. リラックスした姿勢で、肩を動かさないよう注意して、首を(頭を)左肩の方にゆっくり倒して行きます。首の右側の筋肉をストレッチした状態で5秒間静止します。この動作を左右交互に行います。

  2. 首を(頭を)前後に数回ゆっくり動かします。

  3. 体を動かさないように注意して左後方を見るように、ゆっくり首を(頭を)左に回転させます。いっぱいのところで3秒ほど静止させ、ゆっくり戻します。この動作を左右3回行います。

  4. 頭で大きく円を描くように、首を5回ほど左回旋させます。次ぎに右回旋を行います。この場合も肩を動かさないよう注意して下さい。

  5. 姿勢を正して両肘を直角に曲げます。この状態で両肩を頭の方へ、ぐっと引き上げて3秒静止します。次いで一気に脱力して頭・両肩・腕ともに、だらりと下げます。この運動を5回ほど繰り返します。

  6. 腕を組むような感じで、胸の前に腕を交差させ、それぞれの手で両肘部分を持ちます。そのまま肩の高さまで腕を上げて前方にぐっと突き出す運動を行います。この時、左右の肩甲骨の間を広げるような感じで行ってください。

  7. 左腕を上に伸ばし頭の後ろで肘を曲げます。その肘を右手でつかみ、後方、または右側へゆっくりストレッチします。手を変えて数回行って下さい。

  8. 両腕を腰に回し、右手で左手首をつかみ、左手を右下方に引っ張ります。これと同時に首も右に倒してストレッチします。この状態で5秒間静止します。この運動を左右交互に数回行って下さい。

  9. 両手を腰の後ろで組み、胸を膝につけるような感じで、腕を頭の方に引き上げて5秒ほど静止します。

★★ 抵抗運動 ★★

  1. 右手を右側頭にあてて動かないように抵抗を掛けて固定します。それに抵抗して頭で右手を押すように右側に5回押します。次ぎに左手に変えて左側へ抵抗運動します。このを左右交互に2回行います。

  2. 上記と同じ様に、額に手を当てて固定し頭を前に押す運動を5回行います。

  3. お辞儀をした状態で、後頭部に両手を組んで固定し、抵抗を掛けます。正しい姿勢位置まで頭を持ち上げます。この運動を3回ほど行います。

★★ 逆抵抗運動 ★★

  1. 頭部にタオルなどを巻き、右手で右側に引っ張ります。その力に抵抗するように筋肉を緊張させます。この運動を左右交互に数回行います。

  2. 頭部にタオルなどを巻き、手で前方に引っ張ります。その力に抵抗します。同じ様に、後方にも数回行って下さい。

  3. 両手でタオルの両端を持って、左手を左肩から、右手を右背中下から回してできるだけタオルを短くながら、同時に引っ張ります。次ぎに上に引いた時は、もう一方を下に引くように、交互に抵抗運動を繰り返します。上下の手を変えて数回行ってください。

 以上で、基本的な「肩凝り予防体操」の説明を終ります。

 ここで、ご紹介した「肩こり体操」は基本的な体操のほんの一部です。他にも様々な方法がありますが、年齢や症状の程度に応じて、無理の無いように適度に内容を選択して行って下さい。

 簡単な運動ですが、紹介したものだけでも、しっかり行えば、筋肉にとってみれば、かなりの運動量になります。あまり頑張り過ぎると、かえって疲れる事になるかもしれませんから、毎日徐々に行って下さい。
 日頃から適度な運動をすることで、様々な病状の予防に役立つものです。毎日の健康づくりに心掛けましょう。
 大切なことは、職種や生活環境での注意は勿論のこと、健康を考えて各種のスポーツをする事も大変良いことですが、つい頑張りすぎて、その後に疲労が残るようでは困ります。
 しっかり仕事やスポーツをしたのなら、その後のアフターケアもしっかり心掛けることが健康管理のポイントです。疲れを残さないよう。もし疲れが残った場合は、なるべく早く解消するよう努力しましょう。温める温熱療法やマッサージも効果的です。


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