● 腰痛症 (Low Back Pain)

 腰痛は、さまざまな病気でみられます。例えば、外傷、炎症、感染、腰椎の変形・奇形、内臓疾患、代謝障害、腫瘍、心因症、などが腰痛をともないますが、X線や一般検査などから原因を特定できない場合を「腰痛症」としています。
 腰痛症はX線検査を行っても、神経学的にも異常がみられない腰痛です。
 急性腰痛症(おもにぎっくり腰)と、慢性腰痛症に分けられますが、軽度の腰痛症の患者さんは非情に多いものです。

【原因】

 腰痛症の原因は、特定の疾患に由来するものではなく、椎間板や靭帯、筋肉、軟部組織などに、一時的な障害や、部分的な損傷が生じているものと考えられています。
 四つ足で歩く動物の腰椎には、それほど負担はかかりませんが、直立歩行する人間の腰椎への負担は非常に大きく、人間にとって腰痛は宿命とも言えます。
 重い頭を乗せ、姿勢を維持し、腰を曲げたり伸ばしたりしながら、両手で使って作業をすため、脊椎、椎間板、筋肉、靭帯、軟骨、腹筋、背筋、などがバランスよく力を分散させ働いているわけです。そのどこかのバランスが崩れると、そのしわよせが来た部分が疲労したり、障害が出て腰痛をおこすことになります。

 姿勢では、直立している時は、体重分の力が椎間板にかかっていますが、すわる姿勢や、20度の前傾姿勢では1.5倍の力が加わり、更に20kgの荷物を持ては、体重の2倍以上の力がかかることになります。このように姿勢や動作が 腰痛をおこす大きな原因になることは言うまでもありません。
 また肥満(特に腹部の肥満)も、腰椎や背筋への負担が大きくなり、腰痛の原因となります。

★急性腰痛症

 急激に体位を変えたり、重い物を持ち上げた時、まれにくしゃみや咳をした瞬間など、突然、腰椎に大きな力が加わった時におこります。
 こうした急性型の腰痛の内容については「ぎっくり腰」の項目で解説します。

★慢性腰痛症

 長時間、腰に負担をかけるような不自然な姿勢や、過労、肥満、軟らかすぎる寝具の習慣的な使用、或は、ハイヒールを長い間はき続けるなど、日頃の様々な生活動作が原因となります。また痛みの強さには、心理的なものが影響していることもあります。

【症状】

 慢性型では、日常生活に、ひどく支障をきたすことはありませんが、重い物を持ち上げたり、長時間の同じ姿勢、中腰姿勢などは腰に負担がかかります。痛みもひどい時と、軽い時があり、心理状態に影響されることもあります。

【診断】

 既往症、自覚症状などの問診、視診、理学検査、X線検査が行なわれます。また必要であれば、CTスキャン、骨シンチグラフィー、ミエログラフィー、などが行なわれることもあります。

【治療】

 慢性型については、痛みの強い時には、痛みや炎症をとる、抗炎症鎮痛薬が投与されますが、日常生活の指導を受けることが大切です。
 腰に負担をかけない姿勢や、重い物の持ち上げや運搬時の注意、肥満の解消、腹筋・背筋の強化の大切さなど、腰痛に対する知識を本人が持つことが重要なことです。
 軽い痛みが続いている慢性型には、腰痛体操が効果的です。鍼治療に加え、急性期の保存的療法としては温熱療法があります。温熱療法で代表的なものはホットパックです。また、低周波治療などがあります。
 その他、コルセット、マッサージ、腰椎牽引療法が有効な場合もあります。また、長期の慢性腰痛症患者の中には、その痛みの不自由さから、仕事に対する不安や、悩みを持ち、不安定な精神状態が腰痛を更に悪化させる場合もありますので、時には向精神薬の投与を受けたり、精神的指導を受けたりすることが、治療に効果をもたらすことがあります。

 慢性型腰痛は、痛みの程度にも大きな差があり、早急な完治を期待することは難しいとされています。しかし、日常の生活動作に注意し、腹筋、背筋の強化を心掛け、精神状態を明るく保つことなどにより、必ず改善が可能です。
 軽度の腰痛を訴える患者は非常に多く、不自然な姿勢や疲労が原因となっていますが、十分な安静と休養を取れば、たいてい2〜3週間でなおりますが、一度でも腰痛を経験した人は、腰部に弱点が有ることを認識して、予防法を心掛け、再発に注意が必要です。


 情報室 MENU に戻ります