● 胸郭出口症候群
   (Thoracic Outlet Syndrome)

 首から腕の方に向かう血管や神経は、胸郭と鎖骨、その周辺の筋肉に取り囲まれた隙間を通りますが、その腕の方に向かう出口の周りで、神経や血管が圧迫されておこる病態を総称して言います。

 鎖骨下動脈が圧迫されて血行障害がおこると、腕・手指が冷たくなったり、チアノーゼがおこって紫色になったりします。
 彎神経叢が圧迫されると、痛みや痺れ、感覚異常、発汗異常などの症状が生じます。その傷害される部位によって更に細かく、斜角筋症候群(頚肋)、肋鎖症候群、過外転症候群に分けられます。

【原因と症状】

◆ 斜角筋症候群

 前斜角筋と中斜角筋の間の神経が圧迫される病気です。
 原因には、頚肋と呼ばれる肋骨様の骨が、第7頚椎からはみ出して神経や血管を圧迫する場合があります。
 また、もともと前斜角筋と中斜角筋の隙間は狭いのですが、体の疲労や姿勢の変化。筋肉の肥大や痙攀。などが関与して血管や神経を圧迫することもあります。
 手の薬指、小指に知覚異常や痛みがおき、握力も弱くなります。
 30代の、なで肩の女性に多い病気で、長く肩を下げていると症状が悪化します。

◆ 肋鎖症候群

 鎖骨と肋骨の隙間で、血管や神経が圧迫された時におこり、指先に軽い知覚障害とチアノーゼを起こします。
 疲労・姿勢などの変化で、肩が下がると発病しやすいようです。

◆ 過外転症候群

 肋骨と肩甲骨の間にある小胸筋の下や、第1肋骨と鎖骨の間で、神経や血管が圧迫されるとおこり、指先に血行障害、知覚障害がおこります。
 万歳をするように腕を上げる(強く外転する)と圧迫が強まります。壁を塗る作業などのように、腕を頭より上げた状態を、しばらく続けた時などに発病しやすいと言われています。

【診断】

 既往症、職歴などの問診、視診、触診、X線検査などが行われ、五十肩や頚椎椎間板ヘルニアとの鑑別がポイントとなります。

【治療】

 肩を下げた姿勢や、作業姿勢の矯正をします。肩の挙上筋の筋力強化も効果的です。消炎鎮痛薬の投与、温熱療法も行われます。
 特に症状が著しい時は、鎖骨下の神経や血管の通る隙間を広げるために頚肋や第1肋骨を切除する手術が必要なこともあります。


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